まるで透明な壁が徐々に押し寄せてくるような感覚。それが、私がエレベーターに乗るたびに感じる恐怖だ。たった数十秒の時間なのに、私の目は常に非常ボタンと換気口を確認している。
「まだ大丈夫、まだ大丈夫」
心の中で何度も繰り返す言葉も、不安を打ち消すには力不足だ。エレベーターが微かに揺れるたびに、心臓が高鳴る。止まるかもしれない。この箱の中に閉じ込められるかもしれない。そう考えただけで、冷や汗が背筋を走る。
いつからこんな風になってしまったのだろう。
呼吸を整え、意識を内側へと向け瞑想に入る。狭い空間にいるときの感覚を、できるだけ正確に思い出そうとする。
息苦しさ。動悸。手足の震え。そして、どこにも逃げ場がないという絶望感。
その時、突然として一つの記憶が鮮明に蘇った。
小学校4年生の冬の日。いたずら好きの同級生たちに、清掃用具入れのロッカーに押し込められた。狭い。暗い。冷たい。金属の壁が私を締め付ける。叫び声は誰にも届かない。助けを求める声は、ただロッカーの中で反響するだけ。
「出して!誰か!」
当時の恐怖が、まるで今起きているかのように私を襲う。震える手。涙。そして限りない孤独感。すべてが蘇ってきた。
私は目を閉じたまま、その感情の波にただ身を任せた。恐怖、悲しみ、怒り、すべてを受け入れようと努めた。
時計の針が一周するほどの時が過ぎた頃、徐々に心が落ち着きを取り戻してきた。まるで長い間抱えていた重荷から、少しずつ解放されていくような感覚。
私の閉所恐怖症の原点。それは、あの日のロッカーの中にあった。